114歳の美女
 夜遅く智也が帰って来た。


 3人の生活が始まって以来、智也は酒を飲んで帰って来るようになった。

 ときは智也の心境を察して、それを大目に見ていた。


 「お帰りやす。お食事は」

 ときが智也に尋ねた。

 「食べて来た」


 智也がぶっきら棒に答えた。
 そこに、店の間にいた吉のが、奥の間に現れた。


 「いま、お帰りどすか」
 「えええっ!」


 ともやが吉のを見て驚いた。


 (勘弁してよ。今度は婆さんかよ。ええ加減にしろ)


 智也が如実に嫌な顔をした。


 「寝る時まで、ごゆっくり」


 智也の顔色を見て、吉のが慌てて店の間に逃げ帰った。


 (ほんま、地獄や。ああ、こわばら、こわばら)


 吉のは身を縮めて震えていた。





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