114歳の美女
目的の家は、ここからすぐ近くにある。
清二は重い気持ちを押し殺し、歩を進めた。
「ごめん下さい。民生委員の奥野です」
「・・・」
「ごめん下さい」
「なんどすか」
格子戸を開けて、中から80代の老婆が出て来た。
女は眉間に皺を寄せ、表情はすこぶる暗かった。
「民生委員の奥野です。今日は調査でお伺いしました」
「調査。何の調査どすか」
「吉野武三さんに関してお伺いしたい事がありまして」
「父は臥せっていますので。あてが代わりにお伺いします」
「本人に確認がいりますもんで。少しだけでもお会いできませんやろか」
「重病でお会い出来ません、と言うてますやろ」
老婆がきつい口調で言った