114歳の美女
 慌てて店の間へ。


 「お家はん、すいません。ご迷惑をお掛けして」

 ときが吉のに謝りの言葉を掛けた。


 「今、起きたんか」


 吉のが笑顔でときに声を掛けた。


 「へえ」


 「疲れてるのやろ。ご亭主もおらん事やし、たまにはゆっくりせんと、体がもちまへんで」


 吉のは事のほか優しかった。


 ときはあわてて食事を済ませると、てきぱきと後片付けをした。


 智也は3時過ぎに家に帰って来た。

 サウナにでも行って来たのか、智也は髭も剃り、顔もさっぱりとしていた。
 ときと目が合うと、智也が視線を外した。そして、奥の間の隅に座り、ふて腐れた顔をしていた。


 ときは智也のふて腐れた顔を見て、罵りの言葉を口に出すのを思い止まった。

 重苦しい沈黙が就寝時間まで続いた。





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