114歳の美女
 吉のが寝る為に、恐る恐る奥の間に訪れた。


 (何や空気が息苦しいな)


 吉のが自分の布団に入った。

 二人は喋る気配も無く、眠る様子だ。


 (音の無い地獄も、胸が苦しゅうなって、また地獄。眠るには最高やけど。はよ、寝よ。寝よ。お休み)


 吉のは眠る事に決め込んだ。



 嫌な空気が流れる中で、朝が来て、夜が来て、また朝が来た。


 「やっと月曜日か。腰が抜けるかと思うほど長かった」


 吉のは久し振りに清清しい朝を迎えた。
 待ちに待った、しのぶとの交代の日。


 吉のは部屋の隅から隅を、熊のようにのっしのっしと歩いていた。


 「まだかいな」


 「あ~あ」


 吉のは腕時計を見ては、溜息を付いている。
 

 「遅いなあ」


 「まだかいな~」


 吉のは落ち着きがなく、じっとしていられない。立っては座り、座っては立ち、立っては座って。

 ずっと、いらいらのし通し。






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