114歳の美女
 月曜日。


 息の詰まる週末が終わり、新しい週が始まった。
 智也は仕事が終わると、急いで役所を出た。

 「今から行くか」
 「早過ぎないか」

 智也が思案六歩。


 「いや、早い方が良い」


 心が決まると、智也は真っ直ぐに『花簪』に向った。


 格子戸を開けて顔を中に入れると、花香と目が合った。その目は、親しみに満ちた優しい目だった。


 (怒っていない)


 智也が直感的に思った。
 花香は仕込みの真っ最中だった。





 
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