114歳の美女
 「まだ、早かったか」


 智也が花香の顔を覗いた。
 

 「ううん。仕込み中でも良かったら、そこに座って」
 「ご、め、ん、な、さ、い」


 智也がアルバイトの女の子に聞こえない位の小さな声で謝った。

 「・・・」

 花香は手を急がしそうに動かして、目だけで笑っている。

 「ちょっと、待っておくれやす。これだけ、済ましたら・・・」

 智也は座って、花香が手を休めるのを待っていた。


 (怒っていないとすれば、花香はあの事をどう思っているのだろうか・・・。偶然の事故か。棚からぼた餅か。舞妓上がりのモテモテの花香だ。それは、無いだろう)

 待つ間、智也は好き勝手な事を思い巡らせていた。


 花香の手が止まった。次に花香がメモ用紙に何かを書き出した。

 書き終わると、花香が分からないように、それを智也に渡した。そして、意味深な笑いを智也に投げ掛けた。





 
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