114歳の美女
 「情けない男やなあ。てめえって奴は」


 そう言うと、ときは智也と反対の方向を見て横になった。

 「許してくれ」


 「俺が悪かった」



 「浮気は、もう二度としないから・・・」



 智也が言葉を変えて懇願しても、ときは何も語らなかった。


 暫くすると、ときの規則正しい寝息が聞こえて来た。


 智也はめそめそと泣いていた。


 吉のは店の間で、奥の間の様子を、聞き耳を立てて窺っていた。

 この展開を予想して、今日に限って吉のは店の間に布団を敷き、眠る事にしていた。


 「ヒビが入った硝子は、もう元に戻る事はおへん」


 そう呟くと、吉のはいびきを立てて、安らかに安らかに眠りに就いた。





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