114歳の美女
 ときの悲しみは、奥深くズシッと五臓六腑に応えた。


 (何で人は死んで行くのや。何でうちだけが生き残るのや)


 ときは合点が行かなかった。
 

 (寂しい。心が凍る。震える。辛い。孤独。怖い。怖い。怖い。ひとりで生きるのが、たまらなく怖い。大切な人が、次から次に、あっけなく死んで行く)



 (この先、寛ぼんや、しのぶはんだって、きっと・・・。地球上に大切な人が、一人もいなくなるなんて。ああ、狂いそうや。助けて!自分ひとりが長く生きるのは、何かの罰?無期懲役より重い刑。いやや。うちも、うちも、死にたい。今すぐに・・・)



 ときは底の見えない深みに、深く、深く、落ち込んで行った。


 「とき姉さん」


 その時、寛道の声がした。


 「どうぞ」


 ときが返事をした。










< 254 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop