114歳の美女
 「これ、手紙?」

 ときが寛道に尋ねた。

 「ええ、母からの。息子にも渡さない手紙を、とき姉さんに。ひがんでしまいますよ。息子としては」

 「ごめんね」
 「じゃ、僕はこれで」


 「あっ、寛ぼん。元気でいてね」


 (死んじゃいや。うちより先に。絶対に死んじゃいや。許さないから)
 
 ときは浮んだ言葉を、口には出さずに呑み込んだ。

 「えっ、ええ」

 寛道は少し首を傾げて帰って行った。


 ときが封筒の中から便箋を取り出した。
 見覚えのある吉のの筆跡で、文字が綴られている。


 ときがそれに目を通した。





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