114歳の美女
 ときへ


 あえてそう呼ばしてもらいます。何故?それは、あんたの事をあてが、母親代わりと思っているから。

 可笑しいやろ。あんたの方が、ずっとずっと長く生きてるのにな。

 あてが村島家に嫁に入ったのは20歳の時。

 あんたは、確か16歳位に見えましたな。

 それから、55年間。誰よりも長くあんたと寝食を共にして来ましたな。

 不思議なもんどすな。妹のように思うてたあんたが、歳を取らんで、あてばかりが歳を取る。気がつけば、あてがお婆ちゃん。あんたは、まだ30前に見える。不公平やけど、これも定め。

 最初は戸惑ったけど、姑を通して、あんたの母親の熱い思いを知り、いつしかあての気持ちも、同じ思いに。

 心を鬼にした事も、厳しい言葉で傷付けた事もしばしば。さぞや、あてを恨んでいる事やろな。ごめんやで。





 
< 257 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop