114歳の美女
 ときが手紙を読み終えた。


 「お家はん!」

 ときが吉のを呼び求めた。



 「何で、何で、うちを見守ってくれへんの」


 「うちの心の支えやったのに」


 吉のの死は、ときには余りにも痛手だった。


 鬼のような顔の吉のの顔が、ときの目の前に浮んだ。


 「鬼や。鬼や。お家はんは鬼や。うううっうっうっ」


 ときは泣き崩れた。
 涙が、後から、後から、零れ落ちた。


 「鬼や。鬼や」

 「鬼の顔した守り神や」


 「心を鬼にしてまでうちの事を・・・」


 ときの心に大きな大きな空洞が出来た。この穴を埋める存在は、今の世には、誰ひとりといなかった。






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