114歳の美女
 ときは吉のを亡くして以来、非常に寂しかった。非常に孤独だった。非常に遣る瀬無かった。


 パアッと憂さを晴らしたい。そんな要求が、ときのうちに芽生えていた。


 (酒でも飲むか)

 ときは酒で憂さを晴らしたかった。


 (どこへ?ええっと・・・)


 (そや。『花簪』に行こ)


 思い立ったら、吉日。その夜、ときは『花簪』の暖簾を潜った。


 「おこしやす」


 花香が出迎えた。


 (少し見ない間に老けたか。ちまたの女は、すぐに歳を取る。花の命は短くて、たるみと皺のみ多かりき)


 ときは花香の老いを嘲った。







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