114歳の美女
 「貼り紙を見たんどすけど。大丈夫?」
 「ああ、店へ。悪い。女房が急に亡くなったもんだから、力が抜けてしまって」
 
 マスターが沈んだ声で言った。

 「そうや、思てましたわ。マスター、今から気分直しに、うちとドライブに行きまへんか」
 「ドライブか」
 マスターが迷っている様子。


 「気分がスカッとしますぇ」
 「思い切って気分転換するか。それで、どこへ」



 「嵐山は」



 「嵐山・・・。最近、とんとご無沙汰だな。わかった。それじゃ、今から車で店に行くので、少し、待ってくれる」
 「へえ」


 話が決まり、ときは『café昔昔』の前でマスターを待った。
 暫くすると、マスターが、1回の充電で600キロは優に走る最新の電気自動車を、店の前に乗り付けた。





 
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