114歳の美女
 
 「困りましたな。本人にお会いしてお伺いするように、市からきつく言われてましてな。すんまへんな」


 「危篤の重病人に会わせろなんて。無茶苦茶やわ」

 「仕方がおません。そんなら近い内にまた出直しますわ」


 (警察ではないので、強制的に家宅捜査をする事は出来ない)
 
 清二はひとまず引き下がる事にした。
 

 (吉野さんは生存しているのだろうか。もしかして・・・)
 

 清二は厭な予感がしていた。
 

 それで、隣近所で吉野武三について、少し聞き込みをしてみた。
 近所の声は、清二の予感を裏付けるものばかりだった。


 「もう何年も前から、吉野さんのお爺はんは見掛けておりまへん」

 「確か20年ほど前に、お見受けしましたわ。それ以来、見ておりません」

 「吉野さん、100歳はとうに過ぎてますやろ。もう亡くなっとるのと違いますか」


 聞き込みをしていると、清二の思いを確信させる声が数多く入って来た。




 
< 3 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop