114歳の美女
「困りましたな。本人にお会いしてお伺いするように、市からきつく言われてましてな。すんまへんな」
「危篤の重病人に会わせろなんて。無茶苦茶やわ」
「仕方がおません。そんなら近い内にまた出直しますわ」
(警察ではないので、強制的に家宅捜査をする事は出来ない)
清二はひとまず引き下がる事にした。
(吉野さんは生存しているのだろうか。もしかして・・・)
清二は厭な予感がしていた。
それで、隣近所で吉野武三について、少し聞き込みをしてみた。
近所の声は、清二の予感を裏付けるものばかりだった。
「もう何年も前から、吉野さんのお爺はんは見掛けておりまへん」
「確か20年ほど前に、お見受けしましたわ。それ以来、見ておりません」
「吉野さん、100歳はとうに過ぎてますやろ。もう亡くなっとるのと違いますか」
聞き込みをしていると、清二の思いを確信させる声が数多く入って来た。