114歳の美女
2話 ぶどう酒の悪戯
 智也が村島ときの訪問を終え、高齢福祉課の自分の席に戻って来た。


 「おい、どうやった」


 待ちかねていた課長の古田が、智也を見つけると濁声を上げた。


 「奥野さんの目は、まだ耄碌していなかったですわ」

 「と言う事は、その老女は、まだ生存しとるという事か」


 「はい。生存も生存。それが老女ではないんですよ」


 「報告書の通りか。まさか20代には見えんやろ」



 「20代の後半、いや中頃位に見えましたよ」



 「まじか。写真は撮れたか。俺が検分してやる」

 「すみません。撮れなかったのです」

 「それはないで」


 古田は失望した顔を露骨に表した。





 
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