114歳の美女
清二が座敷机の上に載っている、古い新聞に目を遣った。
「その新聞、日付はいつになってますやろ」
清二が警察官の注意を新聞に向けた。
警察官が新聞を取って日付を見た。
「日付は199×年になっとるな」
「今から20年以上前ですな」
清二が警察官に続いて呟いた。
「20年以上も前に吉野武三さんは亡くなったのか」
警察官が老婆に尋ねた。
「すんまへん。父はその年に老衰で・・・」
「何で死亡届を出さなかったんや」
「すんまへん。すんまへん」
それ以後、老婆は両手で顔を押さえ、泣くばかりであった。
警察官は老婆に尋問するのを中断し、携帯電話で京都府警に応援を求めた。
間も無く表が慌しくなり、警察官、暫くしてから報道陣が大挙押し寄せて来た。
清二は警察官の質問に答え終わると、素早くその場を立ち去った。