かくれんぼ、しよ?
カンノさんが見えなくなってから、恐る恐る、小屋の中を覗いてみた。
そこに、鬼はいない。おびただしい量の血液が壁や床一面に飛び散っている。天井から血が滴り落ちる。
そんな凄惨な光景を横目に、拳銃を拾い上げた。
……残っている弾は、一発。
拳銃をポケットに差し込み、小屋を後にした。
今のうちに、なるべく遠くまで逃げよう。
いつ、あいつが戻ってくるかわからない。
鬼だって、きっと死んだわけじゃない。
見つかってしまったら、今度こそ逃げられないだろう。どこかに身を潜めなければ……。
既に辺りは暗かったように思えるが、歩いているうちに、闇が深さを増していくような錯覚を覚える。例えるなら、夜の底とでもいうのだろうか。
……これだけ暗ければ、林の中にでも隠れていれば見つからないんじゃないか。
しかし、足がズキズキと痛む。うまく歩けない。思考することを邪魔される。
朦朧とする意識の中、ユウイチとミクは無事だろうか、と頭に浮かぶ。
ミクは……きっとおれを恨んでいるだろう。当然だ、最低なことをした。本当に、好きだったのに……。
おれはもう、ミクに関わることは許されないだろう。でもどうか、無事でいてほしい。
……ユウイチは、おれを、恨んでいるだろうか?最低なことをしたのに、あいつは、おれを助けようとした。
現に今、助けられて、おれは逃げることができている。
――どうして、そんな風にできるんだ、ユウイチ。
おれは、ひどいことをしたのに。
最低なことをしたのに。
だからおれは、お前のことが――怖くて怖くて、たまらない。