かくれんぼ、しよ?





「マコト!」


ふいに、前方から声が聞こえた。


俯いていた顔を上げると、そこには――こんなところにいるはずのない、ユウイチがいた。



「ユウイチ!?どうしてここに……」


「そんなことより、早く逃げないと!鬼が来る」


そんなことって……なんだよ。何か、おかしい。



「……ユウイチ、お前、ミクはどうしたんだ?」


「ミク?いいからほら、早く来いよ」


やっぱりおかしい。



……こいつは、もしかして。


手招きするユウイチに逆らい、後ずさりをする。


「なんで逃げるんだよ?」


ユウイチが、近付いてくる。その顔には、見たことのない、不気味な笑みが貼り付いている。



「く、来るな!お前、ユウイチじゃないだろ!」


「なんでそんなこと言うんだ?ユウイチだよ。お前が何より怖い、ユウイチだ」


やっぱり、こいつは――鬼だ!



くそ、よりによって……。舌打ちをして、拳銃に手をかけた。


しかし、それを鬼に向けるのを思いとどまった。


弾は、一発しかない――脳裏に浮かぶ、カンノさんの台詞。



『せいぜい、使い道をよく考えるんだな』



……なんだ、そういうことか。


おれは、拳銃の銃口を、自分のこめかみに当てた。


ユウイチが、何か叫んでいる。



――次の瞬間、銃声が、林に響き渡った。




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