かくれんぼ、しよ?





「なっ――」


あの怪我で、どうやって一瞬でここまで……!


振り向くと、そこには無傷のユウイチが立っている。



……相手は鬼。人間じゃない。


銃弾一発打ち込んだところで、何の意味もないってことか……。



もう、どうしようもできないじゃないか……。



立ち止まると、さっきまで意識をそらしていた足の痛みが一気に襲ってくる。


思わず、こけて、仰向けに倒れ込んでしまった。


そこへすかさず、ユウイチが馬乗りになる。



おれの首に、ユウイチの両手がかけられた。



「お前には、醜い感情が渦巻いていて、とっても旨そうなんだよ」


そう言うと、徐々に、両手に力が込められる。



……苦しい、息ができない……怖い。


あの時ミクも、同じような気分だったのだろうか。


……本当に、悪いことをした。



意識が、朦朧としてきた。





「やっぱりおいしそう……いただきます」



薄れゆく視界の中、最後に見えたのは、不気味に――恍惚に笑う、鬼の姿。



意識が闇に飲まれていくのを感じながら、おれはただ、ひたすら思う。





――おれも、ユウイチみたいになりたかったよ。





二人はどうか、無事でいてくれ……





そう思ったのを最後に、おれの思考は、停止した。




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