かくれんぼ、しよ?
「ミユキちゃーん!」
ミクが時々大きい声を出すが、返事は聞こえない。
警察が動いても見つからないのに、素人の高校生が探したところで、見つかるとは思えなかった。
まあ、おれはミクに付き合っているだけであって、仲良くもないクラスメイトのことを本気で探そうだなんて思っていない。マコトも多分そうだと思う。
辺りが本格的に暗くなってきたので、おれもバッグから懐中電灯を取り出し、明かりを点けた。
途端――今まで大人しかったコロが、激しく吠え始めた。
「わ!コロちゃんどうしたの?」
ミクの足元を落ち着きなくうろつき、どこを見るわけではないが、何かを威嚇しているように見える。
「いきなり電気点けたからびっくりしたのか?」
そう言って懐中電灯のスイッチを切ったが、コロの様子は変わらない。
「懐中電灯だったらおれもずっと点けてるし、他に何かあるんじゃないかな。ミク、わかんない?」
「うーんどうしちゃったんだろう……今までこんなことなかったから……」
マコトもミクも困った様子でコロのことをなだめようと撫でたりしているが、コロは興奮しておれたちが見えていないように見える。
「……とりあえず、今日はもう帰るか?」
「思ったより危なそうだし……そうしよっか」
「そうした方がいいな」
ミクとマコトがおれの提案に乗り、立ち上がった時。
「あっ!」
ミクの元から、コロがものすごい勢いで飛び出していった。
あの丸い体であんなにスピードが出るのか、と呑気にも感心したが、霧の中に薄っすらと見える、コロが向かった先は――崖。
ミクに続き、おれもマコトも駆け出していた。