かくれんぼ、しよ?





「なんだ、もう諦めたのか?」



ふいに、背後から聞こえた言葉。


この声は……!


振り返ると、カンノさんが冷酷な笑みを浮かべながら立っていた。


少し、喋りすぎた。追いつかれてしまった……。



「待て、ミクには手、出すな!」


ユウイチくんが、わたしを庇うようにカンノさんとわたしの間に入った。



「……初めからおれは、そのつもりだ。おいキリシマ、『偶然』同じ苗字の縁だ。チャンスをくれてやる」


同じ苗字……そういえば小屋で、キリシマケンジという単語が聞こえた。カンノさんの本名なのかな。



「村のはずれのトンネルはわかるか?」


村のはずれのトンネル……!学校で見た資料に書いてあった。


わたしは頷いて見せた。



「そこに行ってみろ……お前なら、この村を出られるかもしれない」


「え……」


……どういうこと?どうして、わたしなら……。



「おい、どういうことだよ!ミクだけが出られるってことか?」


ユウイチくんが掴みかかる勢いで訊いた。


すると、カンノさんはユウイチくんの胸ぐらを掴む。



「お喋りは仕舞いだ。二人で殺されたいか?」


「くそ、行け!ミク!」



「……行こ、コロちゃん」



わたしは、躊躇わずにその場を離れた。


一度も、振り返りはしなかった。


どうして、ユウイチくんのことが心配にならないんだろう。


……人殺しだから、かな。


信じていたのに、裏切ったからかな。



足早に、トンネルへ向かう。


カンノさんの言う通りにしているわけじゃない。元々行こうと思っていただけ。


何度も助けられたけど、あんな人、味方じゃない。



……わたしは誰も信じない。誰も頼らない。


嫌われるのだって、怖くない。


これからは一人で生きていく。



そう、自分に誓った。




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