かくれんぼ、しよ?
◇◇◇ユウイチ
「おい、ミクなら村を出られるって、どういうことだよ」
カンノを睨みつけると、胸ぐらの手を離された。
「……あいつには『鬼』が見えていない。呪いが不完全だということだ。だったら、出られるかもしれない」
「なるほどな、おれたちは最初から出られないってわかってたのか……だから、泳がせといたんだな?」
「ああ……それに、どうせ殺すんだったら、何も知らない奴をやった方が楽しいからな」
そう言ってカンノは笑う。もはや、自らの狂気を隠す気など微塵もないようだ。
「だが、お前はもう知りすぎた。お前を殺してもつまらないだろうな。ま、だから、さっさと死んでくれ――」
そう言うと共に、カンノは握っていた棍棒で、おれの頭めがけてフルスイングを決めたが――間一髪、おれが体を引いたことでそれは空を切っただけに終わる。
……おれだって運動神経には自信がある。
「お前なんかに、殺されるかよ!」
振り返って、走り出した。
「――せいぜい足掻け。遅かれ早かれ、死ぬんだからな」
死んでたまるかよ、こんなところで!
村の地理もよく知らない。辺りは暗くて先に何があるかよくわからない。
闇雲に走る。
カンノの足音は遠くで聞こえる。
必死になってまで追いかけるつもりはないようだ……舐めてるな、あいつ。
このまま走っていたらこっちの体力が持たない。どこかに隠れた方がいいかもしれない。
ふと目に止まった平屋に足を踏み入れた。