かくれんぼ、しよ?
「コロ?」
崖の前まで来たが、走る途中で見失ったコロの姿は見当たらない。
「コロちゃん……どうしよう」
「きっと見つかるから……大丈夫だよ」
今にも泣きそうなミクを、マコトが慰める。
ミクの手に先ほどまであったリードが見当たらないから、コロはリードごとどこかに行ってしまったのか。
「ミク、リードの色、黄色だったよな?」
「う、うん……そうだけど……」
黄色なら、こんな何もない山の中では目立つはずだ。
「黄色っぽいもの、探せばいいんだな」
崖の下を覗き込む。視界が悪く、どのくらいの坂になっているのか、よく見えない。
「ユウイチ、気を付けろよ」
「あー……あんまり見えないけど……なんか、縄?か、あれ?」
マコトを手招きし、一緒に崖下を見てもらった。
なんだか、色はよくわからないが、縄のようなものが、見える。
「縄、っぽいけど……」
リードではないような、気がする。
ミクもこちらに来て、覗き込む。
「……なんだろうね、あれ……なんか、神社とかにあるやつみたい……」
「注連縄、か?」
たしかに、そうかもしれない。
それにしても、なんであんなところに――
「なんか、おかしくね……」
いつも大人しいコロの、あの様子。
神社があるわけでもないのに、張られた注連縄。
本当に鬼がいるとまでは言わないが、この山、おれたちには想像できない何かが、あるんじゃないか。
立ち上がると、やけに霧が濃くなったように感じた。
「ミク、マコト、一旦帰った方が――」
言いかけた時。
――ゴーン……
どこからか、鐘の音が重く響いた。