かくれんぼ、しよ?
「ゆ、許さない……」
そう喚くサツキの背中はぱっくりと裂かれ、内臓が溢れ始めている。
「思ったより、切れ味がよかったよ」
手に持つ包丁を回しながら言った。
先ほど台所で見つけたものだ。持ってきて正解だ。役に立った。
「許さない許さない許さない許さない……!」
サツキの体が黒い靄で包まれていく。
「ウソツキ」
どす黒い感情のこもった声で、サツキは呟いた。
「嘘なんかついていないさ」
そうだ、おれはサツキを愛している。
だからといって、おれを殺そうとする奴を殺さない理由にはならないだろう。
サツキの体が霧に変わっていく――
いつものことだ。こいつはどうせまた、傷を癒やして、襲いに来る。
「おとうさん……」
背後から、ミヅキの、鼻声混じりの声が聞こえた。
「……あいつは『鬼』だ、仕方なかった」
……振り返ることができない。
ミヅキは何も言わない。
どうか、傷つかないでくれ。
「おとうさんが殺したのは、鬼?」
「ああ、そうだ」
「そっかあ……やっぱりおとうさん……」
ミヅキは何か言いかけて、黙り込んだ。
……どうしたんだ。
ミヅキの方へ振り返った――はずが、そこに姿はなくなっていた。
「ウソツキ、だね」
耳元で囁かれたその声に、ぞくりと、背筋に冷たい感覚が走った。