かくれんぼ、しよ?
目を開けてすぐ傍にあったのは、サツキの顔だった。
床に仰向けで倒れ込んだ状態のまま、思わず、一歩身を引いた。
――おかしい、さっき消えたばかりなのに早すぎる。
それに……目の前にいるサツキの姿は、いつもとは違っている。
マコトが鬼のことをバケモノだと言っていたが――あいつにはこんな感じに見えていたのだろうか。
目の前にいるソレは、顔から辛うじてサツキだとはわかるものの、何やら人の臓器のようなものを身にまとい、サツキのだかわからない折れ曲がった手足が何本か生やしている。
「ケンジさん」
禍々しい見た目通りの、ざらついた声。
しかし、そうやっておれを呼ぶのはサツキしかいない。
――これが、おれの愛した女の成れの果て。
「……ふっ」
思わず、笑いを零した。
おそらく、嘲笑。
何に対してなのか、自分でもわからない。
――ただひとつ、思ったことは。
「サツキ……」
サツキの、焦点の合っていない瞳が、おれを凝視する。
「もう、終わりにしよう」
サツキは、不気味に体を引きずりながらこちらへ迫ってくる。
手元を探ったが……持っていたはずの包丁も、棍棒もない。
……ミヅキの仕業か。
素手でやるしかない。
立ち上がり、目の前まで来たサツキの頬に左手を伸ばした。
「終わりに、するの?」
サツキが言う。舌がうまく回っていない。
「ああ……すべて、終わらせてやる」
右の拳を、思い切りサツキの左頬へ叩き込んだ。
……まるで、あの日のように。