かくれんぼ、しよ?
サツキは小さい悲鳴をあげて、少しよろめく。
倒れるような様子はない。
……やはり素手では無理があったか。
しかしここまで来たら、やるしかない。
間髪入れず、もう一度同じことをした。
何度も、何度も。
その度に、血だか肉だかわからないものが辺りに飛び散る。
やがてサツキは倒れて――おれはその上に馬乗りになった。
サツキの首元に両手を当て、一気に力を込める。
サツキは何も話せないまま、苦悶の表情を浮かべ――やがて、暴れていた手足も動かせなくなった。
手を離す。……サツキは動かない。
黒い霧が辺りを包む。
……また、サツキは霧となって消える。
そう、思ったが――
「殺してやる」
項垂れていたサツキの頭が突然起き上がり、おれに向かって呪詛が呟かれた。
くそ、まだ死んでなかったか。
再びサツキの首を絞めるが――苦しむ様子は見られない。
「無駄よ、もう無駄。わたし、あなたを殺すから。何したってもう無駄。あなたは死ぬのよ、ここで。わたしが殺してあげる。すべて、終わりにしてあげる」
喉が絞められているにも関わらず、サツキは饒舌に喋り続けている。
どうなってやがる。
不意に、肩と腹部に衝撃を感じ、痛みに襲われた。
次の瞬間、何かが込み上がり、吐いた。
……血だ。
おれの肩と腹部をサツキの歪な腕が貫いて、それを支えに壁に磔にされていた。
おれの血液がサツキの腕を伝っていく。
ああ、くそ、これじゃ出血多量でいつ死ぬかわからない。
「ケンジさん、死んで一緒になりましょう?」
いやに耳障りな声。
しかしそれはやけに嬉しそうで――おれの気持ちを揺らがされるには充分だった。
……今度は、おれがサツキに殺される番か。
抵抗をやめ、身を委ねる。
サツキの腕がおれの首に伸び、おれがしたのと同じように力が込められた。
目の前のバケモノは――サツキは、心底嬉しそうな、満足げな笑みを浮かべている。