かくれんぼ、しよ?
……もういい。
もう、疲れたよな。
今まで悪かった、サツキ。
だが……狂気の種はもうじき芽を出す。
意識が遠のいていく――おれの二度目の死。
どちらもロクなもんじゃないが、初めに比べれば、穏やかだ。
笑顔のサツキを目に焼き付けて、それが最後の光景になった……と思ったが。
「だめだよ、サツキ」
その声で、サツキはおれの首を絞める手の力を弱めた。
「み、づき……」
いつの間にか、ミヅキがいた。
血と共に、か細い声を放った。
何故、サツキを止める?すべて知っているのに、どうして。
「サツキ、おねがい。バケモノになんかならないで」
「ミヅキ……」
サツキの姿が、以前と同じように、生前と変わらないように変化していく。
おれの体も解放された。
しかし、この傷で立っていることなどできなくて、否応なくその場に崩れ落ちる。
腕で貫かれていたところから血液が溢れ出てくる。
「ねえ、おとうさん」
ミヅキが、おれの傍に歩み寄った。
しゃがんで、両手でおれの頬を包む。
おれの顔を上に向け、強引に視線を合わせた。
「ずっと、殺してやりたかった」
そう吐き捨てたミヅキの顔は、今まで一度たりとも見たことがない――憎悪に満ちた表情を浮かべていた。
……おれは何も言えず、ミヅキはおもむろにおれの首へと両手をかけた。
「今はね、ユウイチおにいちゃんが一緒にいてくれるから、おとうさんのこと殺せるの」
……ユウイチを殺したのは、ミヅキだったのか。
「ぜーんぶ、終わりにしてあげるね!」
最後に見たミヅキは、生前と同じように――無邪気に笑っていた。
視界が黒一色に染まった。
ゴキッといやな音がして、首の骨が折れたのがわかった。
意識が闇に沈んでいく。
底まで墜ちた時、気が付いた。
――ああ、そうだ、この感覚は何度目だろう。
すべて、思い出した。
この村を形成しているのは、サツキの呪いなんかじゃない。
ミヅキの、呪いだったんだ……。
そして、おれはきっと、それをまた忘れていく。
また、繰り返され続ける。
何も知らずに、無意味にもがき続けるのだ。
――この、醜い感情と血に塗れた、夜の底で。
遠くで鐘の音が聞こえて、おれの意識は、また、繰り返す準備を始めた。