かくれんぼ、しよ?
確かカンノは、ミクならトンネルから出られるかもしれないって言ってたはずだ。
ミクの向かう先を見ると、確かにそこには、古びたトンネルがある。
ミクはそこへたどり着き、コロを地面へ下ろした。
――立ち止まり、トンネルを見つめている。
躊躇しているのだろうか。
地面は未だに唸りながら、揺れを強めている。
危険かもしれない……でも、そうするしかない。
行け、ミク。
どうかお前だけでも、逃げてくれ。
その思いが通じたわけではないだろうが――ミクはゆっくりと、トンネルの中へと足を踏み出した。
ミクの足音がトンネルの中で反響する。
やがて、ミクの姿は、トンネルの先――闇の中へと消えていった。
……どうか、無事で。
おれの大切な、幼なじみ。
ひとり残されたこの村は、段々と、崩壊していく。
地震が強まり、木々が倒れる。家屋が崩れる。
まるで村全体が闇に飲み込まれるように、音を立てて崩れ落ちる。
……不思議と、怖くはなかった。
だって、おれには――
「おにいちゃん」
ミヅキがいる。
ミヅキの体は、半透明で、ふわふわと浮いている。
優しく微笑むミヅキの後ろから、誰かがひょこりと顔を出した。
「お兄ちゃん!」
ユミ……懐かしい、無邪気な笑顔。
ずっと、会いたかった。
「ミヅキたち、ずーっと、一緒だよ」
「ユミはもう、一人じゃないんだね!」
二人が、嬉しそうに笑う。
……まるで思考が麻痺したような違和感を覚えたけど――麻痺しているが故、深くは考えられない。
おれには、ミヅキがいる。
おれには、ユミがいる。
――それだけで、充分なんだ。
二人がおれの傍に来て、辺りは黒い靄に包まれていく。
……きっと、この先は希望なんかじゃない。
きっと、おれたちがいるのは絶望の淵。
それでも構わなかった。
おれたちが、ずっと、一緒にいられるなら。
歪な笑顔の二人に見つめられながら、おれの意識は、眠りについた――。