かくれんぼ、しよ?
◇◇◇空白
「ユウイチくん……」
ミクとマコトは、崖下を覗き込んで呆然としていた。
「……ユミって、ユウイチの妹だよな?」
ミクが、こくり、と小さく頷く。
「それが、こんなところに――」
――いるわけ、ない。
ミクもマコトも、そんなことはわかっていた。
しかし、だとしたら、ユウイチは何を見たのか。
霧の中で何かを人型に見間違えたとして、妹だと断定し危険を顧みず追いかけるものだろうか。
「……マコトくん、どうしよう……」
目に涙をいっぱいに溜めながら、ミクが小さな声で言った。
「ミク……」
夕霧山に行くことを提案したミクが責任を感じていることは、マコトにも充分すぎるくらい伝わっていた。
幼い頃からずっと一緒だったが、ミクの涙を見るのは、片手に数えるほどしかない。
そのミクが、今、きりきりと心を痛めながら、泣いている。
それに加えて、マコトは、ミクがユウイチを元気付けるために肝試しなんて提案をしたことに気付いていた。
「――大丈夫、だから、ね」
マコトは、色々な思いに歯を食いしばりながら、無責任な言葉を投げかけることしかできなかった。
マコトがミクの頭を撫でながら、暫く沈黙が続いた。
沈黙の間に、辺りにはすっかり夜の帳が降りる。
先に沈黙を破ったのは、ミクだった。
「……マコトくん、わたし、ユウイチくんのこと探しに行くよ」
「何言って――」
マコトは、懲りる様子のないミクの言葉に、さすがに無謀すぎると思い止めようとした――が、途中で言葉を飲み込んだ。