かくれんぼ、しよ?
ミクは、崖の方へと振り向く。
携帯電話の微かな明かりを向ける。
――ごくり、と唾を飲み込んだ。
コロやユウイチの不可解な様子も、行方不明の同級生も、銃の窃盗事件も、辺りの暗さも、不気味な霧も――
すべてが、恐怖を感じさせる材料になる。
「ダメだ、ミク、帰ろう」
さっきより少し強引に、マコトはミクの手を引いた。
ミクはそれをまた振りほどこうとして――
「うわっ」
足を滑らせてしまった。
「ミク!」
マコトは倒れるミクの腕を掴んだが、支えきれず、二人で倒れ込み――倒れた先は、崖だった。
転がり落ちる中、マコトはミクのことを守るように抱きかかえる。
二人とも転がるのを止めようとするが、どうすることもできないまま、とうとう坂の下まで来てしまった。
「み、ミク?大丈夫?」
「だいじょう、ぶ……マコトくんは?」
「大丈夫、だと思う……」
目がまわり足取りがおぼつかないながら、互いに安否を確認する。
辺りに、マコトのリュックの中身がいくつか散らばっていた。
マコトはそれを、慌てて拾い集める。
そんなマコトを見て、ミクは言う。
「マコトくん、ありがと……守ってくれて」
マコトの服は、ミクの何倍も汚れていた。
「え、いや!ご、ごめん……」
マコトはミクのことを思いきり抱きしめたことを思い出し、不意に謝罪を漏らした。
「え、なんで謝るの?」
ミクは、くすり、と笑う。
しかし、すぐに笑顔は消えて、目を伏せた。
「……謝るのは、わたしだよね。ほんと、ごめんなさい……」
マコトは、いつもの明るい様子と違うミクにどうしたらいいかわからず、まず、ユウイチだったらどうするか、を考えてしまう。
そんな自分に、舌打ちしそうになる。
きつく拳を握り、口を開いた。
「仕方ないよ。何も、ミクは悪くない。大丈夫!」
優しく言った。
なんて無責任だ、と心で自分を嘲笑しつつ、マコトはそれしか言えなかった。
「マコトくん……」
ミクは、思わず溢れそうになる涙を、手首の辺りで拭った。