かくれんぼ、しよ?
軽く二メートルはある背の高い人間に、何人もの死体を貼り付けたような、ソレ。
いくつかの死体は、まるで表裏をひっくり返したように、ナカミが見えている。
ソレがもし人間だったら顔であるところの、大きく見開いたような目と、ばっちり視線が合う。
「ひっ……」
悲鳴をあげるにも、ミクを呼ぶにも、言葉にならない。
思わず地面に座り込みながら、後ずさりする。
しかし、うまく手足が動かない。
自分のからだを動かすのが、こんなに難しいなんて――
ソレは注連縄の向こうからこちらを見たまま、動かない。
マコトがゆっくり、ゆっくりと後ずさりをするうちに、メガネがずり落ちてしまった。
慌てて直した、その後。
顔を上げると、ソレはいなくなっていた。
「――っはぁ、はぁ……」
マコトは大きく息をしながら、頭を整理しようとするが、追いつかない。
暫くその場でそうしていたら、呼吸も整ってきた。
――なんだったんだ、あれは……
言うならば、恐怖、の一言。
頭の中で鳴り続ける警報に、帰らなければ、という気持ちが先立つ。
しかし、既に、ミクの姿はなくなっていた。
「――ミク……」
一人で引き返すか、ミクを追うか。
どちらが最善かは、わかっていた。
しかし、短く悩んだ末――
「くそっ……」
意を決して、マコトは注連縄の先へと走り出した。