かくれんぼ、しよ?
かくれんぼしよ?
◇◇◇ユウイチ
「ねえねえ、聞いた?隣のクラスの吉越さんのハナシ!」
「え?なんかあったの?」
「なんかね、友達と一緒に行方不明になっちゃったんだってー!」
「なにそれー、こわー」
「それでね、なんと吉越さん、あの、鬼がいるっていう夕霧山に行ったらしいの!」
「うわ、それってさ、ジゴウジトクってやつだよね。ばっかみたーい。もしかして、鐘の音、聞いちゃった?」
「うっそー、やば!鬼に食べられちゃったのかなー?うける!」
夕暮れの、綺麗なような、不気味なような、そんなオレンジの陽を浴びながら、ひぐらしの鳴き声に混じった知らない女子の会話をぼーっと聞いていた。
人の不幸は蜜の味ってやつなのか。おれのクラスメイトの吉越さんの不幸をやたら笑いながら話している。
べつに聞き耳を立ててるわけじゃないが、あんな声量で話されたら嫌でも聞こえるし、もう終業時間から三十分も経ったのに、いつも一緒に帰っているやつらがなかなか来ないから、暇潰しだ。
それにしても、かわいそうな吉越さん。暗くて地味な、目立つことが嫌いな人だったのに、あちこちで噂話をされちゃって。
それにしても――あの、鬼がいる山で、行方不明だなんて。
この周辺で昔からよく聞くうわさがある。
『二度目の鐘が鳴った時に外にいると、鬼に食べられる』
そして、近所の夕霧山には、その鬼とやらがいるらしい。
くだらない噂だ。