かくれんぼ、しよ?
「……なに、これ」
ミクは、思わず声を漏らした。
注連縄を越えた瞬間、突然霧が濃くなって、一歩踏み出した後。
次は霧が突然晴れたと思ったら、辺りには、信じられない光景が広がっていた。
ここは森の中の崖下で、何もないはずが――ぽつり、ぽつり、と平屋が建っている。
見渡す限り明かりが灯っている家はなく、月明かりだけがただ不気味に道を照らしていた。
古そうな家の他には、舗装されていない、踏め固められただけのような道と、畑がある。
田舎、という言葉で表せる光景が、そこには広がっていた。
振り返ってみたが、そこには、あるはずの注連縄がない。
林が広がっているだけで、崖もなければ、マコトの姿もない。
「コロちゃん、ここ、どこかな?」
ミクはコロに話しかけるが、コロはくぅんと、情けない声を漏らすだけだった。
「……どーしよー……」
あまりに不可解なことが起こりすぎて、ミクは何から考えるべきかわからなかった。
ひとまず、辺りも暗くて不安なので、ここに突っ立っているわけにもいかず、誰かに会えれば、と、とぼとぼと歩き出す。
「ユウイチくーん……」
返事はない。
「マコトくーん……」
返事はない。
はあ、と大きくため息をつく。
歩いていたら、木陰に、人影が見えた。
「あ!すいませーん!」
ミクは、そこへ向かって走り出す。
すると、その人もミクに気付いたのか、こちらへ向かってきた。
ミクの手には、携帯電話の画面の微かな明かりしかないため、その人のことはよく見えない。
5メートル程度のところまで近付き、ようやく顔が見えて――ミクは、小さく悲鳴をあげた。