かくれんぼ、しよ?
まるで、映画なんかで見る、ゾンビのような――
グロテスクとしかいいようのない見た目の、人だかどうだかもわからないモノが、そこにいた。
ふらり、ふらり、とおぼつかない足取りでミクに近づいて来る。
「や、やだっ……」
ミクは腰が抜けてしまい、その場から動けない。
コロもミクの後ろに隠れ、弱々しく体を震わせた。
ソレが目の前まで来て、ミクに手を伸ばし、あと数センチ――
ああ、もうダメだ、と目をぎゅっと瞑った瞬間だった。
――ごん、と鈍い音がした。
ミクが恐る恐る瞼を持ち上げると、目の前には、飛び散るグロテスク。
ぴちゃり、と頬に跳ねた何かを拭おうとしたが、それはかなわず――ミクは、気を失った。
ミクが最後に見たのは、グロテスクな何かを踏み潰す、白衣の男だった。
「お客さんか……」
白衣の男は、ミクを見下ろして吐き捨てるように言った。
手に持っている棍棒を、ぶん、と振って、足の下にいるモノの破片を払う。
しゃがみこんで、ミクを抱え上げた。
コロが、男に向かって激しく吠える。
「……おまえも、食われたくなきゃついてこい」
コロは、男の鋭い眼光に観念したように、吠えるのをやめた。
男の後をついて歩いていくコロのしっぽは、すっかり垂れ下がっていた。