かくれんぼ、しよ?
「……なんだったんだ、さっきの?」
ユウイチは、ひとり、暗闇に包まれていた。
――ユミを追って来たが、突然霧が濃くなり、見失った。
しかしその後、今度は霧が晴れ、辺りには見覚えのない村の風景が広がっていた。
途方に暮れていたら、人を見付け、声をかけた時――
ミクの出会ったアレと同じモノが、ユウイチの前に現れた。
……ああ、このままじゃやばい。
そう思ったユウイチは、咄嗟に駆け出した。
恐怖で体が動かなくなる前に、ただがむしゃらに走って、走って――
視界に入った倉庫らしき小屋に飛び込んだ。
ユウイチは、今、身の回りで何が起こっているのか整理しようと思うが、うまく、頭が回らない。
心臓がどきどきして、落ち着かない。
しかしユウイチは、こういう時、どうすればいいか知っていた。
目を閉じて、大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。
それを繰り返すうちに、激しい鼓動は収まってきた。
「……よし」
とにかく、何が起こっているのかいくら考えてもわからないから、ユウイチは、これからどうするか、を決めることにした。
落ち着いてみると、埃の匂いと、なんだか鼻につくいやな匂いが漂っていることに気付いた。
何かあるのかと辺りを見回すにも暗くて何も見えない。
しかしすぐに、手に握りしめた懐中電灯の存在を思い出した。
手汗でべたついたそれのスイッチを押したが――
「あれ?」
明かりは点かない。
カチカチ、と何度も電源のオンオフを繰り返すが、懐中電灯が辺りを照らしてくれる様子はない。
こんな時に、電池切れか――
ユウイチは落胆しながらも、ゆっくりと立ち上がった。
まだ、この近くにユミがいるかもしれない。
ミクとマコトが、追ってきたかもしれない。
だとしたら、ここでぼーっとしていている場合じゃない、と、ユウイチは小屋を後にした。
外に出ると、中途半端な薄暗さがいやに不気味に感じられた。
背の高い木々の隙間、遠くで微かに空を染める赤が、漂う不気味さに拍車をかける。
何でもない草むらさえ人影に見えるほど気を張り詰めながら、ユウイチがゆっくりと歩みを進めていた、その時――
「おにいちゃん」
少女の声が、ユウイチの耳に届いた。