かくれんぼ、しよ?
人間だったと思われる、赤黒いモノが、そこに散らばっていた。
衣服から、かろうじて、からだのどの部分か推測できるというくらいまでには、原型を留めていなかった。
しかし、その衣服はミクやユウイチのものではない。そのことに安堵しながらも、だったらこんなもの見なければよかったと後悔した。
いよいよ何かこみ上げてくるのを感じ、マコトはソレから目を逸らした。
――ここにくる前に見かけたバケモノがやったのだろうか。そもそもアレは一体何なのか。
思い出しただけで、今目にした光景も相まり、マコトの心に恐怖がぞわぞわと忍び寄る。
一生もののトラウマになりかけない光景を二度も目にしたマコトの気は相当滅入っていた。
どうして自分ばかりがこんな目に、と舌打ちし、悪態をつくが、もしかしたらミクもこんな思いをしているのかもしれないと思い直した。
するとマコトは、少しだけ、前向きな気持ちが生まれたのを感じた。
とりあえず、誰かに会えないものかと、マコトは歩き続けた。
少し離れたところに民家らしきものが何件か見える。
そこに向かう途中、小さい倉庫のような建物が目に止まった。
窓はないようで、入り口を探すのに建物の裏に回ろうとした時だった。
遠くに、幼い少女に手を引かれるまま歩いていくユウイチの姿が見えた。
「ゆ……」
呼びかけて、マコトは口をつぐんだ。
というより、声を発せなかった。
恐怖から声が出せなくなる体験は、これで二度目だ。
建物の角から現れた人影――それはまるで、ゾンビのようで、ところどころ皮膚がただれたりめくれあがったりしていて、目は窪んでいる。
ソレとマコトは、ばっちり目線を合わせていた。
それも手を伸ばせば届く距離で――
「う、うわあああ!」
間一髪、ゾンビに手を伸ばされ、思考停止していた脳を無理やり動かしたマコトは、叫びながら踵を返し、その場から逃げ出した。