かくれんぼ、しよ?
「あ、あの!ななななんですかこれ!」
鏡の中のわたしの顔には……血のようなものが、べったりとついている。
な、なんで?でも痛くないし……さっぱりわからない。
「覚えてないならいいけどな、とりあえず拭いたらどうだ?」
低音で淡々と発されたその言葉を聞いて、慌ててタオルで血を拭った。
こんなについてたら、制服も汚れちゃってるかも!
頬に続き首元にタオルを持っていって、気付いた。
……セーラー服じゃ、ない。
わたしが身に纏っているのは、病院とかで入院患者さんが着てたりする、白い羽織物だった。
うーん、おかしいな。なんかあんまり思い出せないし……なんでだろう?
山歩きにセーラー服なんて、ってユウイチくんとマコトくんに言われた気がするんだけど……
そういえば、結んでいた髪もほどけている。
「制服なら、洗っておいたが。そろそろ乾いただろ」
わたしが首を傾げていたら、男の人が言った。
「あ、ありがとうございます!」
部屋から出ていこうとする男の人の背中を見て、ふと、何か頭の中がもやっとした。
――あ。もしかして……
「あ、あの!」
男の人は、立ち止まって振り向いた。
「なんだ」
ぶっきらぼうに言うその人の顔を、まともに見ることができない。俯いてしまう。
「あ、あのー……えっと、その……」
「どうした?」
あー、早く言わなきゃ怒られそうかも……。ちらりと目線を上げて、決心して口を開いた。
「……見ました?」