かくれんぼ、しよ?
「は?」
「あ、スミマセン」
思わず、大声を出してしまった。
男の人は、怪訝そうな表情を浮かべて、なんだこいつ?とでも言いたげにわたしを見ている。
「こ、コロちゃんは知りません?コロコロでふわふわの!」
「……ああ、おまえの連れてた犬のことか。玄関にいるから心配するな」
よかった!少しだけ、安心した。
「ほんっとーに、ありがとうございます!」
「ああ……ところで」
わたしの礼には興味なさげに、男の人は切り出した。
「おれはこれから少し出かけるが――ついでにおまえの探してるやつらも見つけたら連れてくるから。ちょっとここで待っておけ」
「え、だったらわたしも一緒に……」
「だめだ」
その言葉は、小さな声だったけど、その人の口から聞いた何よりも、重く響いた。
理由もわからず、頷いてしまうくらいに。
「……一つ目の鐘は、聞いたな?」
「あ……はい」
夕霧山でユウイチくんとマコトくんと一緒に聞いた、あれのことだろう。
「だったらここにいろ。二つ目の鐘が鳴ったら……ヤツが来るからな」
それだけ言ってその人は、踵を返した。
ただそれを見送ろうとしたら――その人は部屋の出口で立ち止まり、振り向いた。