かくれんぼ、しよ?
「おまえ、名前は?」
「あっ、霧島未来、です!」
そう言うとその人は、一瞬眉をひそめた気がした。
「キリシマ……ミクか。おれはカンノ。じゃあ、着替えておとなしくしておけよ」
カンノさんっていうんだね。
カンノさんに続き出口から消える、白衣の裾。
……そういえば、お医者さんかな?
まだ色々、聞いていないことがある。
カンノさんが帰ってきてから聞いてみよう。
そう思いながら、ベッドに倒れ込んだ時――
「あ、それとだな」
「あっ、はい!」
わたしにまだ言いたいことあるのか、カンノさんが戻ってきた。
慌てて体を起こし、そっちに視線を送る。
「やられたのなら、やり返せよ?」
「え……」
わたしがその言葉の意味を理解するよりも早く、カンノさんは今度こそ出かけていった。
――やられたら、やり返せ。
ゾンビに襲われたら、戦えってことかな?
……わたしが立ち向かったところで、どうにかなるのかな。
血とか苦手だし、また倒れちゃいそうだし……てか、またゾンビに会うかもってこと?
あのゾンビのことも何なのか聞いてないし、一人では心細い。
「あ、そうだ」
ふと、玄関先にコロちゃんがいることを思い出した。
着替えて様子を見に行くことにしよう。
そう思って、起き上がった時。
なんだか、体調があまり良くないことに気付いた。
お腹のあたりが痛いのと、少し気持ち悪い感じがする。
首を傾げながらも、別段気にすることなく着替える。
べつに、こんな小さな痛みなんてどうでもいい。
それより早くコロちゃんに会いたくて、枕元に置いてあった燭台を手に取り、カンノさんが行った方――玄関がありそうな方へ、小走りで向かった。