かくれんぼ、しよ?
「え、ミクちゃん!?だよね……その前に、えっと、あ、あの、その犬を、どっか……」
ミユキちゃんは、腰を抜かすどころか、口もうまく回っていない。
犬って……もしかして、コロちゃんを見て腰を抜かしたのかな?
「今の悲鳴、何かあったの?」
訊ねながら、コロちゃんを抱き、ミユキちゃんから遠ざけた。
コロちゃんはわたしの頬を舐めてとても嬉しそうで――無事でよかったけど、今はミユキちゃんが心配だ。
「ごめん……あたし、犬が苦手で……」
あ、やっぱりそうなんだ。
コロちゃんの顔を覗き込んでみる。……こんなにかわいいのになあ。
「じゃあしょーがないね!とりあえず、中、入ろ?」
まるで自分の家みたいに、部屋に行くように促した。
「うん、そうだね……」
ミユキちゃんは壁に手をつきながら、立ち上がった。よかった、ひとりで歩けそう。
しかし、靴を脱いでこっちに来るミユキちゃんは――しきりに外の方へ振り返って、何かを気にしているみたいに見える。
「どーしたの?」
「あー、いや、さっきの悲鳴で、その、誰か来たら嫌だなーって……」
「もしかして、ゾンビのこと?」
「え、ミクちゃんも見たの!?」
ミユキちゃんも見たんだ……
わたしは思い出すだけでこわいし、吐き気もするし、どうしても気分が悪くなる。
心配して、ミユキちゃんの方をちらりと見ると――そこには、想像とは正反対の表情を浮かべるミユキちゃんがいた。
「すっごく、こわいよね!あれ!なんなんだろうね?人間が生き返ったのかな?それとも幽霊かな?」
嬉々として喋りだすミユキちゃんは饒舌で、学校で話す時の大人しい様子とは、別人みたいに感じる。
「み、ミユキちゃん?」
「ミクちゃんはどう思う?あたしはやっぱり、人間に魂が乗り移ってたりすると、おもしろいと思うんだけどさー」
「えーと、お、おもしろい?」
「せっかくこんなにオカルトテイストな村に来ることができたんだから、どうせならもっと不可解なことが起こって欲しいんだよね!」
わたしの言うことに耳を貸さない様子で語り続けるミユキちゃんに、愛想笑いで相槌を打つ。
……ミユキちゃん、どうしちゃったんだろ。
変に恐怖を感じながら、部屋へと進む足取りを早めた。