かくれんぼ、しよ?
◇◇◇マコト
くそ、なんなんだよ、ほんとに……!
あんなバケモノみたいなのがうようよしてるっていうのか?
――ただ、ひたすら、目的地もなく、走る。
バケモノから逃げるために。
……ミクは、無事なのだろうか。まずはそれが心配だ。
こんなわけのわからないところで、あんなわけのわからないモノに襲われて、きっと、すごく不安だろう。
「ミク……」
――おれは、ミクを連れてこんなところからはさっさと抜け出すんだ。
そう、自分に言い聞かせるように、拳を強く握った。
――一時間くらい、経っただろうか。しばらく歩いたが、何にも出会うことなく、ただ明かりの灯っていない家を横目に歩いた。
暗い道は、途方もなく続くように感じる。
「……あれ」
歩き疲れた頃、ふと、暗闇の中に、小さな明かりが目に止まった。
平屋の窓の向こうに、ぼんやりと赤い色が揺れている。
……誰かいるのか?
人かもしれない。……バケモノかもしれない。
思いは揺らいだが――積極的な決断をすることにした。
きっと、ユウイチならこうするから。
玄関の引き戸に、手をかけた。
唾を飲み込み、ゆっくりと引く。
小さくカラカラと音を立てた先、戸の向こう側にあったモノ、見覚えのあるそれは――
「み、ミク……!」
ミクのローファーだった。
踵を踏んで潰した跡に、傷の位置も、ミクのローファーそのもの。
ここにミクがいるのか……!
もうひとつ、女子のと思われるスニーカーがあるのが気になるが――迷わず、家の中に入ることにした。