かくれんぼ、しよ?
歩くたびに音を立てる廊下は、わざとらしいほど不気味だ。
明かりがあると思われる部屋に近付いた時――微かに、話し声が聞こえた。
「――ここは、『地図から消えた村』」
地図から消えた、村?
――聞き覚えのない声で語られた、興味深い言葉。
「……え?」
これは、ミクの声だ。よかった、無事だったんだな……。
それにしても、相手は誰なのだろうか。女子だし、ミクも普通に話しているから、危険な相手じゃないんだろうけど。
「知りたい?この村にまつわる、昔話」
……話している内容といい、気になることが多い。
「……それ、おれも聞いていい?」
部屋を覗くと、コロを抱いたミクと――同年代と思われる女子がベッドに座っていた。
「え、ま、マコトくんー!」
ミクはおれに気付くと、コロを片手に抱いたまま、空いた方の腕で抱きついてきた。
「無事でよかったよ……」
誰だか知らない女子の手前、恥ずかしい気もするけど、ミクの頭をぽんと撫でた。
「あのー、お二人さん?ラブコメするのはいいけど、あたし、急いでるんだけど……」
「わーごめんねミユキちゃん!」
顔を真っ赤にしながら離れるミクに見とれそうになりながらも、何かが頭に引っかかって、素直に見とれていられない。
……ミユキちゃん?ミユキちゃんって、もしかして。
「吉越さん?」
つい指を指しながら、その女子に確認してみる。
「あ、そうです」
やっぱり、そうか。呆気なく見つかる探し人に、落胆すら覚えそうになる。
「――それで、この村にまつわる昔話って?」
話を戻すと、ミクは吉越さんの隣に座り直した。
「それじゃ、教えてあげるね……」
吉越さんは、楽しそうな笑みを浮かべながら口を開いた。