かくれんぼ、しよ?
「ここは、かつて存在していたけれど、地図から消えた村――いえ、消された村なの」
「いや、ちょっと待って」
いきなり、とんでもないことを言うから、思わず吉越さんの言葉を制止した。
かつて存在していた……ということは。
「この村が存在しているってことは、おれたちはタイムスリップでもしてきたっていうのか?」
「まあ、そうなるのかも」
なんだか楽しそうな吉越さんだが、一蹴したはずのくだらない予感が的中したおれは、目眩すら覚える。
タイムスリップ、なんて……。
「……そうか、続けてくれ」
どうせもう常識では考えられない範疇の話だと思い、いちいち驚くのも疲れるから、考えるのは後にすることにした。
ミクはとっくに、その心構えができているらしく、口をつぐんで耳を傾けている。
「ここ、夕霧村はね、流行病で滅びた村なの。そのー、あなたは見た?あのゾンビ」
ついさっき襲われかけた、アレのことだろう。
「ああ、見たけど……吉越さんも、ミクも、見たのか?」
おれの問いに二人とも、頷いた。
無事で、本当によかった……改めてそう思う。
「ゾンビの見た目……流行病の症状に似てるんだよね。あんな風になっちゃう病気で、ここの村人は、全滅したって言われてるの」
「……そんな……」
本当なら、えげつない病気があったもんだな……。
――ふと、違和感を覚える。
あれが、病気だとするならば。
「まさかあのゾンビは、ゾンビじゃなくて――生きている人間なのか?」
「いやあ、さすがに、それはないんじゃない?あたしもわかんないけど……」
「あ、あれは多分――生きてる人じゃなくて、ゾンビだよ!」
黙って聞いていたミクが、口を開いた。
やけに自信ありげに言うので、おれも吉越さんも首を傾げてミクを見つめた。
「カンノさんが、迷わないですぐに倒してたから……あ、カンノさんっていうのは白衣を着てて、わたしを助けてくれた人なんだけど。生きてる人のこと、躊躇いなく殺したりしないでしょ?」
カンノさんとやらが気になるが、ミクの言うとおりだと思った。