かくれんぼ、しよ?
「そういえば、ユウイチのクラスだったか?行方不明の……」
ふと、マコトが言ったのは、例の吉越さんのこと。
ああ、クラスが違うマコトも知っているのか。吉越さんはすっかり有名人だな、と、不謹慎にも、そう思う。
「あーそうだな。おれクラス同じだよ」
「行方不明って?なに?だれが?」
しかし、ミクはミクだった。このお気楽天然ボケをマコトと一緒にしてはいけない。
「ミクは知らないのか。何だったなー、名前」
「吉越ミユキ、だけど」
「え、ミユキちゃん!?わたしちょっと仲良いんだけど……」
心底驚いた顔のミク。
「マジかよ、なんか友達と一緒に夕霧山に行ったらしいけどな」
「探しに行く!」
「は?」
おれとマコトは、ミクを見た後、二人で顔を見合わせた。
おまえやっちゃったな、と言いたげなマコトに、軽く手を上げて謝った。
しかし、ミクがいくら正義感が強くても、探しに行くとか、そんなことを言い出すなんて、思わなかった。
「それでは、ユウイチくん、マコトくん!帰宅後、六時に夕霧山の近くの公園に集合!おーけー?」
「いやいやいや、おまえ、まじかそれ」
「おれらが探しに行っても、見つけられないって……夜の山とか危ないし、せめて明日とかにした方がいいだろ」
「いやいや、肝試しも兼ねて!」
「肝試し……いきなりはちょっと……やっぱり明日にしないか?」
マコトが、『肝試し』というワードに腰が引けているのが伝わる。昔からの怖がりは高校生の今でも直っていない。
「だめー!だって、明日は……ね?」
ミクが、珍しく寂しげな顔をして、おれの目を見つめた。
そんな顔されても困るんだけどな……。
そう思いつつ、口を開いた。
「明日はちょっと、おれ、だめなんだ」