赤ずきん様とオオカミさん




おにぎりは私と大神にとって思い出の品なのだ。

「大神のバカ」

ありがとう、と素直に言えない私には、こんな言葉しか言えないのだ。

だが、大神は分かってしまう。

「どういたしまして、柚希ちゃんっ」

赤鈴家専用に作らせた赤のリムジンのドアが閉まり、外の世界とシャットダウンされたこの瞬間、大神は本来のボディーガードに戻り笑顔で言った。

不意でドキッ、としたが、恥ずかしくて顔を伏せた。




< 12 / 39 >

この作品をシェア

pagetop