赤ずきん様とオオカミさん
おにぎりは私と大神にとって思い出の品なのだ。
「大神のバカ」
ありがとう、と素直に言えない私には、こんな言葉しか言えないのだ。
だが、大神は分かってしまう。
「どういたしまして、柚希ちゃんっ」
赤鈴家専用に作らせた赤のリムジンのドアが閉まり、外の世界とシャットダウンされたこの瞬間、大神は本来のボディーガードに戻り笑顔で言った。
不意でドキッ、としたが、恥ずかしくて顔を伏せた。