昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
『とにかく…気をつけろよ。アンタ、女なんだから。』
「ッ――」
血の付いていないほうの手で、彼は乃梨子の頭をなで、去って行った。
どうして――
去っていく彼の後ろ姿を見つめながら、乃梨子は撫でられた頭に触れる。
どうして彼に、拒否反応はなかった・・・?
勇敢にも、私を守ってくれた彼。
私に忠告までしてくれた。
男は皆、汚らわしいものだと思ってた。
でも、本当は違う…?
それは、私の勘違いですの…?
ぐちゃぐちゃな心の中で、乃梨子は彼に思いを馳せた。