昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
「…いただきます。」
「あっ、乃梨子だけずりぃぞ!」
賄い料理は、オムライスだった。
乃梨子が先にスプーンを取ったのが嫌だったのか、沙希はあわててオムライスを口にする。
「うっめぇ~!!」
そんな沙希は口にするなり大きな声で美味しさを表現していた。
一方、乃梨子は――…
「―――」
黙々と、オムライスを口にしていた。
「裕也、どうやって作ったんだよ、めっちゃ美味いじゃねーか!」
「…るせぇ、サルは黙ってろ。」
「何だとー!」
「沙希!!」
口にチキンライスの米粒をつけた先を、乃梨子が大声で牽制した。
「ここは自分の家ではありません、口を慎んでいただけますか?」
「…分かったよ、乃梨子…。」
乃梨子の鋭い瞳に、さすがの沙希も何も言えなかった。
怒った乃梨子ほど、敵に回すものではないことを、沙希が一番分かっているからだ。