昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
「じゃぁなっ、裕也!また来てやんよ!」
「もう来るな、サル。」
会計を済ませると、沙希が裕也に絡み始めた。
「客は神様って習わなかったのかよ~」
「ふんっ、サルが客なんざ聞いたことねぇよ。」
「あんだとぉ~!?」
「沙希、やめなさい。」
「ちっ…!」
乃梨子の牽制で、裕也の胸倉を掴んでいた沙希が手を離した。
まるで主人とペットだ。
「ごちそうさまでした。」
「乃梨子、行こうぜっ」
「ぇえ、今すぐに――」
「おい、」
拗ねた沙希はもう店の外。
それに続こうと背中を向けた乃梨子を――裕也が止めた。