昨日、私の心を奪ったのは彼でした。



「じゃぁなっ、裕也!また来てやんよ!」

「もう来るな、サル。」


会計を済ませると、沙希が裕也に絡み始めた。


「客は神様って習わなかったのかよ~」

「ふんっ、サルが客なんざ聞いたことねぇよ。」

「あんだとぉ~!?」

「沙希、やめなさい。」

「ちっ…!」


乃梨子の牽制で、裕也の胸倉を掴んでいた沙希が手を離した。

まるで主人とペットだ。


「ごちそうさまでした。」

「乃梨子、行こうぜっ」

「ぇえ、今すぐに――」

「おい、」


拗ねた沙希はもう店の外。

それに続こうと背中を向けた乃梨子を――裕也が止めた。





< 23 / 34 >

この作品をシェア

pagetop