昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
(…何やってんだ、俺。)
引き止めて、裕也は我に帰る。
乃梨子を引き止めたのは、とっさのことだったらしい。
「あの…何ですか?」
「え、あ、いや…――その、」
ききたいことはあった。
オムライスの味の感想だ。
だが、裕也は中々口を開けなかった。
乃梨子の裕也を見つめる瞳が…――澄み切っていたからだ。
全てを見透かしていそうで。
「あの、さ…」
「裕也さん、」
「え?」
「裕也さんと、お呼びしてもよろしいですか?」
そう言った乃梨子の瞳は裕也を射抜くほど強い。
ゆるがない、鋭い眼差しに、裕也は――…
「ぁあ…いい、けど、、、」
片言に、そう返事することで精いっぱいだ。