昨日、私の心を奪ったのは彼でした。
――『のっ、乃梨子さん!!これっ、僕の気持ちです!!』
学校に入った瞬間、乃梨子の周りには男子生徒が集まる。
『おいっ、抜け駆けすんなよ!?』
『お前もだろっ!?』
誰もが彼女に自分の存在を知ってもらおうと必死である。
そんな中、男子生徒の輪の中心にいる乃梨子は――
「汚らわしいですわ!道をお開けになってください!」
『『『・・・っ』』』
乃梨子の容姿からは到底予想もつかない大声が、校門前に響き渡った。
ゆっくりと乃梨子の前に道ができ、乃梨子は堂々と進んでいく。
そんな乃梨子の後ろ姿を沙希はついて行きながら、登校途中で購入したおにぎりを食べながら見つめていた。